コレクション: 静謐(Serenity)



 これまで木軸筆記具を製作してきた中で、杢、瘤杢をもっと引き立てたいという思いがありました。

先般より試作テストを行っておりました木軸万年筆ですが、試作工程を終えて、仕様を決定・生産開始いたしました。

 位置と組み合わせ、手にしたときの質感、セグメントのバランス、持ちやすさを考慮しつつ、制作手順を確立し作成を開始しました。と書けば簡単ですが....


このデザインの決定には、数十回に及ぶ設計の見直し、サンプル製作、銘木、瘤杢をどのように入れ込むかの検討、銘木でサンプルを製作して、どの位置が引き立つか、厚みはどの位がいいか幾度となく検討し、幾度となく失敗を繰り返し、デザインを考慮しました。

加工の順序が違うだけで全く精度が出なくなってしまうので、どの工程が精度が出せるかを検討に検討を重ねる、今までにない険しい道のりを経て完成しました。

銘木によって銘木を引き立て、その樹の何百年、何千年と生きた証、その生命力にあふれた表情と、手作りでしか味わえない、安らぎと、温かさを感じていただければ幸いです。

軸の温かさに沿うよう、首軸、嵌合部分ともに温かく、やさしい触り心地のエボナイトを使用しています。
手にしたとき…使い込むほどに、時と共に味わい深い風合いとなっていき、その表面の微妙な変化に気付かれるはずです。

キャップの僅かな反り具合、黙って…ずっと親指で撫でていたくなる触感…思考する親指と名付けたいと思いましたが、これを静謐(せいひつ)と名付けました。