about
鈴木 崇之(製作者)

解体
1971年、宮城県古川に生まれ、幼少期に両親が魅了された信州・塩尻へと移り住みました。
子供の頃の私は、柱時計やミシンをバラバラにしては元に戻せなくなり、よく叱られていた記憶があります。ただ「物がどうなっているのかを知りたい」という欲求のままに動いていました。工作も好きでしたが、その倍は物を壊してしまう。あまりに失敗を繰り返すうちに、いつしか自信を持てないまま大人になりました。
静寂との対話
大人になり、手を動かすことは得意でも、何を造ればいいのか定まらない日々が続きました。他人の作品に影響されては自分を見失い、自分を表現することから逃げ出したくなることもありました。
そんな折、父が他界し、彼が遺した山々の写真を手にした時、ふと足が自然へと向きました。他人の情報を遮断し、信州の深い山々や父が愛した風景に身を置くことで、ようやく「自分自身の深淵」に目を向ける覚悟ができたのです。
正対する
現在、私は信州の地で、一つの塊から筆記具を削り出しています。
信州の空気の中で、樹々の生命力に触れるとき、かつて物をバラバラにしていた「衝動」は、細部のディテールや触感を極限まで突き詰める「情熱」へと昇華されました。
制作において大切にしているのは、あらゆる素材と「正対」することです。木がその生の中で刻んできた傷や歪み、あるいは素材が持つ固有の情景。それらをごまかさず正面から見つめ、対話を重ねる。その時間は、私にとって深い場所へとダイブする行為そのものです。
藍
集中が極まり、素材と自分の芯が重なるとき、周囲の音は消え、景色は深く、暗く、澄んだ「藍」の静寂に包まれます。そこは冷たい場所ではなく、ただ純度の高い密度が支配する世界。
完成した一本を手に取るとき、その深い場所に指先が微かに触れる感覚があります。それは、素材の芯に触れると同時に、自分自身の核に触れる瞬間でもあります。
私たちの内側には、泡のように浮かんでは消える、正体のわからない思考が無数に存在しています。「綴り屋」の道具が、あなた自身の深い場所へと潜り、その思考を言葉として着地させるための、静かな伴走者となることを願っています。
