コレクション: 漆黒 ( Darkness )

 漆黒……これは表面をなぞる言葉ではありません。光が最後に沈んでいく、その一歩手前。その先にひらく深淵のことです。

求め続けているのは、雑音のない静かな世界。そこへ近づきたくて、ものをつくっているのかもしれません。艶やかなエボナイトにも、幾重にも重ねた層にも、素材の奥に眠る陰影にも、覗き込めば同じ深さがあります。仕上げがどのようなものであっても、行き着く先は変わらないはずです。だからこの一本には、素材を越えて「漆黒」という一つの名前を与えています。

深い闇のなかでは、目よりも先に、耳や指先が働きはじめます。見えないからこそ、そっと気配をたどろうとする。心も、同じなのかもしれません。静けさの奥へ降りていくほど、忙しさに紛れて聞こえなくなっていた声が、少しずつ輪郭を取り戻していきます。

本当に伝えたい言葉は、いつも深いところにあります。すぐには掬い上げられなくても、そこにあり続けている。急がず、そっと手を伸ばせばいい。漆黒に触れる時間が、その深さへ静かに降りていくきっかけになればと思うのです。

「あなたの沈黙に、最も近い場所で」。その静けさにいちばん近い深さを、私たちは漆黒と呼んでいます。